毎年夏になるとやってくるお盆ですが、私にとっては単にお墓参りをしたり、親の実家に親戚が集まったりするだけの、なんとなく決まった年中行事という印象でした。しかし、ふと「そもそもお盆ってどういう歴史があって始まったのだろう」と気になり、少し調べてみることにしました。
始まりはお釈迦様の弟子のエピソードから
お盆の正式な名前は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と呼ぶそうです。小さなお葬式のお盆の時期や由来を解説したコラムによると、その起源はお釈迦様の弟子である目連尊者(もくれんそんじゃ)という人の古いエピソードにあるのだとか。亡くなった母親が餓鬼道に落ちて逆さ吊りの苦しみを受けているのを知った目連尊者が、お釈迦様の教えに従って夏の修行が終わる日に僧侶たちを供養したところ、その功徳によって母親が救われたというお話です。この「逆さ吊り」を意味するサンスクリット語の「ウラムバナ」が、お盆の語源になったと言われています。
日本にお盆が伝わったのはとても古く、飛鳥時代の推古天皇の時代にはすでに最初の行事が行われていたという記録が残っています。江戸時代になると庶民の間にも広く定着し、日本古来の「夏に祖先を迎えて供養する」という信仰と結びついて、今の形になったそうです。歴史を知ることで、ただのお墓参りだと思っていた行事に、深い感謝の念が込められているのだと気づかされます。
お盆の海にまつわるちょっと怖い話
子供の頃の思い出を振り返ると、私にとってのお盆は「遠出」と深く結びついていました。親の実家へ行くために、車で長い時間をかけて移動した記憶が鮮明に残っています。
車窓から見える海はキラキラと輝いていてとても綺麗でしたが、その一方で、親からは「お盆の時期は海に入ってはいけないよ」とよく言い聞かされていました。お盆の時期に海に入ると、あの世から戻ってきた霊に足を引っ張られて、海の中に引き寄せられてしまうというのです。当時はその話が少し怖くて、海を眺めながらも絶対に近づかないようにしていました。
大人になってから知ったのですが、この言い伝えには単なる迷信だけではない、現実的な理由がありました。お盆の時期はちょうど台風の影響で突然高い波が発生しやすくなったり、沖へ引っ張られる強い潮の流れができやすくなったりする季節です。さらにクラゲが大量発生する時期でもあり、水温の急な低下も起こりやすいそうです。昔の人は、そうした水難事故の危険から子供たちを守るために、少し怖い言い伝えを使って注意を促していたのですね。こうした先人の知恵には、いつも感心させられます。
函館だけお盆が早い不思議
また、お盆といえば8月半ばのイメージが強いですが、地域によって時期が異なることも面白い発見でした。たとえば、北海道の函館では1ヶ月早い7月にお盆が行われます。
以前、函館へ旅行したことがあり、函館には親しみがあるのですが、まさかお盆の時期が違うとは知りませんでした。調べてみると、明治時代に新暦に変わった際、8月のお盆の時期が地元の大きなお祭り(函館八幡宮の例大祭など)と重なるのを避けるため、仏教会が7月に行うよう取り決めたという歴史的経緯があるそうです(以前に紹介したホテルグローバルビュー函館なども函館にありますね)。祖先を静かに振り返る大切な時間を確保するための、地域ならではの工夫だったのだなと感じます。
こうした歴史や地域による違いを知ると、お盆や法要に対する見方が少し変わってきます。一回忌や三回忌、七回忌といった法事も、かつては形式的なもののように感じていましたが、実は生きている私たちが故人との記憶を呼び覚まし、懐かしさを分かち合うためにあるのではないでしょうか。
忙しい日常の中で、亡くなった人のことを思い出して語り合う時間は、ある意味で生きている私たち自身の心を穏やかにし、前を向くために必要な時間なのかもしれません。そういう意味で、お盆や法要は、亡くなった人のためであると同時に、今を生きている私たちのための時間でもあるのだと思います。
これからも、こうして祖先を振り返り、大切な記憶を思い出す時間を大切に続けていきたいものです。
記憶を呼び覚ます優しい時間